年次有給休暇の付与義務化

簡単にまとめてみました!

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この記事・動画でわかる疑問

☑施行時期はいつから?

☑対象となる事業主

☑対象となる労働者

☑今までの有給休暇

☑法改正で変わったこと

☑有給にまつわるよくある誤解

対象となる事業主

・中小企業・大企業問わず2019年4月1日より施行

・労働基準法の使用者には個人も含まれるため、個人事業主も含みます

付与義務の対象となる労働者

・年間10日以上の有給休暇が付与される労働者

※以下の労働者

①いわゆるフルタイム社員

②週の所定労働時間が30時間以上のパートタイマー

③週の所定労働日数が5日以上のパートタイマー

④週の所定労働時間30時間未満かつ所定労働日数が4日以下の労働者で以下の表の赤塗りの勤務年数を満たす方

週の所定労働日数  年間所定労働日数  勤続年数
6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月
4日 169~216日 7日 8日 9日 10日 12日 13日 15日
3日 121~168日 5日 6日 6日 8日 9日 10日 11日
2日  73~120日 3日 4日 4日 5日 6日 6日 7日
1日  48~ 72日 1日 2日 2日 2日 3日 3日 3日

今までの有給休暇

請求されても与えなければ罰則・請求されない限りは付与義務なし・・・でした。

労働基準法39条により、年次有給休暇は各労働者ごとに付与されています。

 

今までは、労働者が時季を指定して請求し、休んだにもかかわらず、付与しなかった(≒賃金の支払いがなかった)場合に労基法39条違反が成立していました。

 

また、よくある話ですが、単に『忙しいから』や『周囲の仲間に迷惑がかかるから認めない』は有効な時季変更権の行使とは認められず、ひとたび労働者が有休の時季指定を行えば、ほぼ有給休暇は成立します。

※退職時の有給消化などでここらへんが論点になることが多いので参考までに。

 

ただ、やはりおとなしい国民性なのか、在職中の有給休暇についてはなかなか言い出せない雰囲気というものが醸成されている職場も確かにあります。

 

そういう職場こそ今回の法正法には、お気をつけください。

 

いままでは、『請求された際に付与しなければ罰則』←ココ重要

改正法施行でこう変わります!

請求されなかった!は認められない。請求されなければ積極的に5日の付与義務

改正法施行後からは、以下のようになります。

 

①請求されたら付与する→現行法通り

②請求されなくても、基準日から1年以内に最低5日間は労働者の意見を尊重したうえで、付与するNew!

③個人別の年次有給休暇管理簿の調製New!※労基法施行規則24条の7

 

✅対象者は、年次有給休暇が10日以上付与される労働者(管理監督者を含む)に限ります。

✅労働者ごとに、年次有給休暇を付与した日(基準日)から1年以内に5日について、使用者が取得時季を指定して与える必要があります。

✅年次有給休暇を5日以上取得済みの労働者に対しては、使用者による時季指定は不要です。

✅年次有給休暇管理簿の調製及び3年の保存

 

これからは、

『請求された際に付与しないと罰則は当然、なおかつ積極的に付与しなければならない!』

がキーワードとなります。

労使ともによくある有休に関する誤解

誤解① 有給休暇の買い取りについて

→原則として不可です。これは有休の趣旨が

『労働義務のある日の労働を免除し、心身のリフレッシュを図り、賃金を支払う』

という趣旨だからです。買取では心身のリフレッシュは図れません。

ただし、例外として

①労働者側から

②退職時等の未消化有休の買い取り請求があって

③使用者側が合意した場合

に限っては違法ではないとされています。いずれにせよ、会社には買取請求する権利がなく、また、買取請求に応じる義務はないということです。労働者側に立つと、退職日までの有休残余日数についてはあくまでも、お願いベースで買取提案又は退職日の先送りを提案されたほうがよいと思います。そうなりたくなければ、退職日と最終出勤日という単語を使い分けて退職届&有給休暇の申請をすべきでしょう。

 

誤解② 退職日後に有休消化?

→できません。有給休暇は労働契約に付随する権利行使です。退職日を以って労働契約関係は解消されます。

 

誤解③ パートは出勤率を満たしていないから有給休暇がもらえない?

→これも誤りです。確かに労基法39条に全労働日の8割以上の出勤が条件という主旨の記載がありますが、全労働日=出勤義務のある日です。曲解して全労働日=全暦日or全営業日、よってパートには付与できないという会社もあるようですが、これは誤りと言わざるを得ません。

 

誤解④ 所定休日を減らして、計画的付与に充当するのは違法?

→ここは非常に判断が難しいです。少なくとも労基法の枠内で判断できる案件ではありません。5日の取得義務化に対応する手法です。行政としては『望ましくない』に留まります。問題は就業規則の一方的変更により所定休日を減らし(=今年から労働日)、労使協定により当該労働日に対して計画的付与の対象とする。この一連の流れで、就業規則の変更について合理的な理由があるかという問題ですので、労働契約法10条の問題ですね。すなわち、民事案件です。※合理的な理由の存在の立証責任は会社側にあります。

事業主の課題

・有給休暇を積極的に取得させる文化がある会社

→問題ありません。

 

・法定の有給休暇を与え、請求されたら与えている会社

→概ね問題ありませんが、管理職層などは有休をとらず、モーレツに働く方も多いはず。今回の法改正は管理職も含めた全労働者が対象です。有給休暇管理簿の調製と『個人』ごとに付与義務の達成状況を確認し、怪しい方には積極的に勧奨しましょう。

 

・有給休暇の文化がない、各労働者の有給休暇日数すら管理できていない

→危険です。まずは、対象となる従業員のピックアップ、基準日(付与される日)の把握。個人ごとの有給休暇管理簿の調製が課題となります。

 

 

出来ない場合は法違反となり、最悪の場合、30万円の罰金刑のおそれもあります。

※罰金刑を交通違反の反則金のように捉えている方がいますので補足。罰金刑は逮捕→送検→起訴→有罪判決のフローで進行するものです、経済的なダメージよりも、前科がついてしまうことが怖いですね。

当事務所へのご依頼

【コンサルティングフロー概要】

①事業の内容や就業規則、実態などを調査・ヒアリングします。

 

②その上で、事業に支障のない方法で有給休暇の付与義務を履行できる方法を提案いたします。

 

③制度の運用に問題がないか、アフターフォローの実施※原則として、顧問先限定

 

【費用について】

①の段階・・・・・稼働時間に応じた費用(5,000円/30分)

②・・・・・・・・別途お見積りとなります。

③・・・・・・・・無料※顧問先に限る

 

また、申し訳ありませんが、顧問先事業所を優先とさせていただきますので、お問合せ頂いた場合でも、スケジュールの都合で、ご希望に添いかねる場合がございますことをご了承ください。