コロナウィルス・休業手当等 まとめ

音声解説動画

この記事・動画で伝えたいこと

☑休業手当(≠休業補償)とは?

☑労働契約上の債権者都合の労務提供不能とは?

☑休業手当の対象と債権者都合の労務提供不能事案との違い

☑コロナウィルス感染者に対する出勤禁止措置は休業手当の対象か?

☑コロナウィルス感染者に対する保険給付は何がある?

☑感染拡大防止のために一定の症状の従業員を出勤禁止とする措置は休業手当の対象か?

注意事項

・この記事・動画は2020年3月1日時点のものです。

・記載内容には注意を払っておりますが、誤りがある場合でも、いかなる責任も負いません。

・記載内容の無断複製・転載を禁止します。

はじめに

2020年1月より、中国で発見された、新型コロナウィルス。人から人への感染を契機に世界中に拡大しています。その後、本稿執筆時点で感染拡大の収束の目途がつかず、小中学校の休校や、WHOがパンデミックの可能性について示唆しています。

 

今回は休業手当・民法536条第2項(債権者に帰責事由のある履行不能。以下、債権者都合の労務提供不能)を中心に人事労務の専門家としての観点で、労使双方に役立つ情報をご案内します。

休業手当とは?

まずは、休業手当の根拠となる条文からご紹介します。労働基準法第26条です。

※因みに類似の言葉で休業補償がありますが、休業補償は労基法76条及び労災保険法上の給付に用いる概念のため、労基法26条の休業手当とは異なります。

 

第二十六条 使用者の責に帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の百分の六十以上の手当を支払わなければならない。

 

簡単に言ってしまうと会社都合(広義)の休業が発生した場合は日給(平均賃金)の60%払ってね。ということです。これは労働者の生活保障という観点で設けられた条文です。

 

では、どのような事由が休業手当の対象となるのでしょうか?

例えば・・・・・

・製造業における、機械の故障による操業停止

・宿泊業における顧客の大量キャンセルによる休業

・取引先からの一方的、突然の解約による売上の低下による休業

等々、一見すると、直接的に会社に責任があるとは言い切れない事案も休業手当の対象となります。

 

休業手当の対象とならないのは、一言でいうと不可抗力の場合です。これは、大規模な震災などの天災事変が考えられます。

 

休業手当の支払いがない場合、労基法120条により30万円以下の罰金刑が科される場合があります。

休業手当に関する少し変な質問

少し話がそれますが、こんな質問を受けたことがあります。

 

Q.風邪を引いて会社を休みました。1日分の賃金が控除されたんですが違法ですか?休業手当の対象ですか?

A.債務者が、債務者の都合で債務の履行(労務の提供)をしなかっただけなので、休業手当の話ではありませんし、ノーワークノーペイの原則からも欠勤控除に問題はありません。

 

たくさんの方がいれば、こういう質問に対する相談対応もプロとして覚悟しなければならないと思った瞬間でした。

債権者に帰責事由のある労務提供不能とは?

続いては、労働契約における危険負担に関するお話です。

 

とりあえず、民法の条文からご紹介。

民法536条第2項

債権者の責めに帰すべき事由によって債務を履行することができなくなったときは、債務者は、反対給付を受ける権利を失わない。略

 

これをもう少し分かりやすく。

・労務の提供を受ける債権を持つ者→会社

・労務の提供をする債務を持つ者→労働者

・反対給付→賃金債権

・賃金債権を持つ者→労働者

・賃金債務を持つ者→会社

を前提に条文を読み替え&注釈すると下記のように変化します。

会社の責めに帰すべき事由によって労務の提供を履行することができなくなったときは、労働者は、賃金を受ける権利を失わない。略

 

と、なります。

 

つまり、会社都合(狭義・限定的な意味)で休業した場合でも賃金債権は失わないということです(会社としてみると賃金債務を免れない)。

 

民法536条第2項の事例として以下のような事例が考えられます

・店に出勤したが、店舗のシフトミスでWブッキングが発生したことにより、『帰れ!』と言われ帰宅した。

・解雇がなされた後、判決で解雇無効が確定した場合の不就労期間。いわゆるバックペイ事案

 

休業手当の事案(機械の故障や、取引先起因等)と比べると、より直接的に会社側に不就労について責任があるように思えますね。

 

もちろん、天災地変などの当事者双方の責に帰すべき事由でないときは、労務の提供がなければ賃金債権も消滅します(民法536条第1項)。

 

休業手当が平均賃金の60%の支払義務に対して、債権者都合の労務提供不能とされた場合、原則として賃金額の100%の支払義務を負います。

 

また、100%の支払義務のうち、休業手当部分(60%)を支払えば、残りの40%について支払わなくても罰則はありません。したがって、会社都合の休業の場合においては、それが民法536条第2項に該当するorしない、で揉めることがあります。そういった場合でも企業としては労基法を順守するために60%の支払は速やかに支払っておくべきでしょう。※労働者都合の休業であれば支払う必要はありません。

 

後ほど図で示します。

休業手当と債権者都合の労務提供不能の違い

項目 休業手当 債権者都合の労務提供不能
支払額 平均賃金の60% 原則として100%
支払わなかった場合の罰則 あり。労基法26条違反

休業手当と重なる部分(60%)

については、労基法26条違反。

残余の40%部分については罰則なし=民事

会社の帰責事由 使用者の責に帰すべき事由。意味は広い 債権者の責に帰すべき事由。意味は狭い、限定的
根拠法 労働基準法 民法

休業手当と債権者都合の労務提供不能事案イメージ

下図のように、休業手当の対象事案は、民法の債権者の責に帰すべき事由よりも広い概念と言えます。また、債権者都合の労務提供不能は休業手当の対象に含まれています。

休業手当と債権者都合の労務提供不能イメージ

Q.1コロナウィルス感染者への就業禁止は休業手当?

では、ようやく本題です。

 

Q.1 コロナウィルス感染者(無症状者含む)に対する出勤禁止措置は休業手当の対象か?

A.1 休業手当の対象とはなりません。

理由:労働安全衛生法第68条・同法施行規則第61条・感染症予防法第18条第2項等で『病者の就業禁止』が規定されている為、使用者の責に帰すべき事由にならない。

※法を守っても、不可抗力(休業手当の支払義務なし)にはならないと言われたらシャレにならないですね。

Q.2コロナウィルス感染者に対する保険給付は何がある?

続いては、労働者視点でこちら。

 

Q.2 コロナウィルス感染者に対する保険給付は何がある?

A.2 労務不能となった日の4日目以降に健康保険の被保険者に対して傷病手当金ができると思われます。金額は標準報酬日額の2/3です。但し、あくまでも健康保険の被保険者限定です。また、最初の3日間は待期となりますので、その間の欠勤控除が嫌であれば、最初の3日は年次有給休暇の利用をご検討ください。

Q.3感染拡大防止のために一定の症状の従業員を出勤禁止とすることは休業手当の対象か?

ここがミソですね。

 

答えは何とも言えないけど、有休の使用を勧奨してくださいになりますね。

 

本稿執筆時点で行われている休校要請や、不要な外出を控えるような呼びかけというものはいわば感染の拡大を防止するという目的の策です。症状のみで一律に出勤禁止をするという措置も『万が一コロナウィルスに感染していたら・・・』とナーバスに考える気持ちもわからなくはありません。しかしながら、診断された病名による判断ではなく、症状のみでの出勤禁止措置は休業に関して不可抗力とまでは言えず、休業手当の支払対象となり得ます。※何とも前例がないので歯切れが悪くなってしまいます。

 

会社も労働者も年次有給休暇の活用を視野に入れて様子を見るようにしたほうが良いかもしれませんね。

まとめ

☑休業手当の対象となるべき事由は比較的広く、不可抗力の証明が必要

☑債権者(会社)の責に帰すべき労務提供不能となった場合は、原則として賃金100%の支払が必要。当事者間で争いがある場合は少なくとも60%を支払っておいたほうが良い。残る40%は民事で!

☑感染者に対しては病者の就業禁止規定があるため、休業手当不要。有休使用の勧奨や、傷病手当金の検討を

☑事業場の閉鎖や、病名不確定時の休業措置は休業手当の対象となり得る。労使合意の上、有休の勧奨も視野に

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※記載内容に誤りがある場合でもいかなる責任を負いません。

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